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Chapter 01

シブヤの真ん中にこっそり存在する、老朽化した雑居ビルの屋上。
成長を続ける超々高層ビルに囲まれ、ここだけ時間が止まったようになっていた。
幼い少女と老人は、そのお気に入りの場所で夜空を眺めながら話をするのが大好きだった。
「おじいさま、あの青いお星なあに?」
「ああ、アレはこと座のベガだよ。一等星で、とても明るく輝くんだ」
二人の頭上には、シブヤの夜景にも負けず、こと座のベガが一際青く輝いていた。

CREATOKYOの中心街、CTシブヤ駅は相変わらずの人混みでごった返していた。電光掲示板をハックしてデジタルグラフィティを描くクラウド「DRAW」のリーダー、アヤトは、3代目ハチ公像の前で、同じ高校に通うメガネ男子・シバやんと待ち合わせていた。やがて二人は合流し、行きつけの牛野家へ。BIC(ベーシック・インカム・クレジット)残高がそろそろヤバイので、牛丼大盛りに温玉をオンできない…

スクランブル交差点の大型サイネージでは、今月のトップクリエイターが発表されるCTランキングが始まったところだった。特にトップテンの発表はお祭りのように盛り上がる瞬間で、アヤトとシバやんは大勢の若者に混じりランキングを眺めていた。
ついに発表されるランキング一位は、先月初登場でトップテン入りした無所属の「ユーコ」だった。クラウドでのエントリーが基本のCTランキングをたった一人で制するという前代未聞の展開に、歓声とどよめきがスクランブル交差点に響き渡った。
「ユーコちゃんヤベー!ピンで一位なっちまったよー!!」
素っ頓狂な声を上げるシバやん。
アヤト、皮肉まじりにつぶやく。
「どーせコネかなんかっしょ。で、オレらは何位?」
「…7000位」
「……WTF…」
ユーコは今やCREATOKYOで一番有名なクリエイターだ。天才的な作品群と、隠し撮りされた一枚の写真しか存在しない為、ランキング登場からわずか一ヶ月で早くも神格化されていた。100位までのランキング発表も終わり、暇を持て余したシバやんが折りたたみスマホを眺めながらアヤトに話しかける。
「なぁ、VEGAって知ってる?」
「ああ、世界を変えちまうって噂の、ヤバいギアだろ?」
ユーコと並んでCTシブヤで一番ホットなトピックは『VEGA』だった。
この存在もまた「ギア」であるということ以外判明していない為、様々な憶測が飛び交っていた。
「ま、どっちも俺らにはカンケーねーわな」
そう吐き捨てるアヤト。しかしその目は泳いでいた。本心ではユーコと『VEGA』の存在が気になって仕方ないのだ。
そんな会話で時間を潰す二人は、頭上の存在に全く気づいていなかった。ランキングビルの屋上に一人、白いフードを目深に被った謎の少女が、スクランブル交差点を見下ろしていた。

クラウドで溢れかえるコロブ・ミルク・バー(R15)。カフェイン入りのミルクカクテルをあおりながら、DRAWの4人のメンバーたちは、今夜の計画を話していた。
「おい!前のボム(グラフィティを描くこと)、SNSにトレンド入りしたぞ!」
スマホを見ながら叫ぶアヤトに、メンバーのケンイチが反応する。
「つーか、ストリートワークって、CTランク上がんの?」
「上がるわけないでしょ。いたずらだし」
紅一点のななおかは、ぶっきらぼうに答えた。
「ま、サイネージジャックのプログラム考えたのオレだからwww」
と自慢げに言い張るシバやん。ちなみにシバやんがあんな高度なプログラムを書けるわけもなく、ユーコがSNSに載せてるオープンソースを丸パクりしている事は明白だったが、他のメンバーは特に気にせず泳がせていた。
そこへ、巨大な旗を持ったハタナカa.k.a.ハタ坊が、ドカドカと遅れてやってきた。
「あー!ハタ坊、旗なんていらねーって言ってんじゃん」
視界が塞がるくらい巨大な旗を手でよけながらアヤトが問い詰める。
「いやほら、いつかバズった時にさ、DRAWはオレらでーす!っつってさ、出来るじゃんww」
「足軽かお前は!」
「戦国時代に帰れ!」
ケンイチとななおかの鋭いツッコミにも、ハタ坊はニコニコとしながら狭いバーの中で旗を広げていた。その巨大な旗越しにアヤトは、バーの奥の暗がりで一人カクテルを傾ける女の子に目が止まった。白いフードを目深に被った彼女がまとう雰囲気は、謎のトップランカー「ユーコ」によく似ていた。
「まさか…な」

コロブ・ミルク・バーを出たDRAWのメンバーは、ワルヤマチョーに溢れるサイネージをジャックし、グラフィティをボムっていた。
次々とサイネージがDRAWのグラフィティに変わっていく。
「またお前らか、ガキ共ォォ!」
ちょうどワルヤマチョーを巡回していたセキュリティがDRAWのメンバーの前に現れた。
「ヤベェ!逃げろォ!」
セキュリティに追いかけられ、必死に逃げるアヤトとDRAWメンバーたち。
アヤトは、通信教育でかじった似非パルクールを駆使して逃げ回るが、徐々に追い詰められてしまう。
「今日という今日は許さんぞォ!」
セキュリティが叫んだその瞬間、突如周辺にあったサイネージがショートするほど、強烈に発光した。
「今よ!逃げて!」
謎の声に従い、逃げるアヤト。なんとか誰もいない路地裏まで逃げ切り、肩で息を整えた。
「はぁはぁ、さっきのなんだったんだ…?」
「今のはバグプログラム。もちろんアンダーコントロールだけど」
声の主が透過した状態から浮き彫りになる。そのコートは光学迷彩だった。
「キミは…!?」
助けてくれたのは、なんとトップランカーのユーコだった。
手にはサイネージをジャックする際に使ったであろう、青色のギアが輝いている。
「SNSでバズってたから見に来たものの、私のオープンソースをまんま使うとか、ダサすぎ」
そう言い残し、ユーコはまた姿を消した。突然の出来事にアヤトの頭は混乱し、その場で放心するしかなかった。
その様子を遠巻きから眺める黒服の男達がいた。

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